夏季・緑陰講座「指文字塾」
8月7日は立秋でした。暦の上では秋になったとはいえ、「残暑」の厳しい日はまだまだ続きます。この暑さのなか、世の受験生たちは夏期講習会などで猛勉強中のことでしょう。
さて、そこで私たちの手話教室でも『夏季・緑陰講座』と銘打って、今週から数回にわたり特定の項目にしぼって集中学習を行ないたいと思います。
講座項目は「指文字」。前回少し触れましたように、肩の高さに置かれた利き手の指の形で50音全てを表わす指文字は、
人名・固有名詞など手話の語彙が存在しない単語を伝えようとするときに必要不可欠なものです。
ここで指文字の歴史についてひとこと触れておきます。指文字は、そもそもの発祥は修道院においてでした。
中世の昔、厳しい戒律の課せられていた修道院内では、沈黙の行というものがあり、その間、修道士たちは手話や指文字でコミュニケーションをはかっていました。
これが指文字の起源といわれています。
その指文字が聾教育に取り入れられたのは、1545年のスペインにおいてでした。
この年、北スペインのサン・サルバドル・ド・オーニャの修道院の修道士ペトロ・ポンセ・ド・レオンが、スペインの名家の二人の息子(聾者)に指文字を使って読み書きや会話を教えたという記録が残っています。
スペインで生まれた指文字は、18世紀にフランスに伝わりフランス式の聾教育のなかに取り入れられました。
アメリカに渡ったのは19世紀に入ってからで、日本の指文字はそのアメリカの系譜に連なります。
1929年、アメリカ視察から帰った大阪市立聾学校の大曽根源助は、アメリカ式指文字をヒントにかな45文字を表わす指文字を考案しました。
その日本式指文字は、「あいうえお」の母音5文字を「a.i.u.e.o」から取られているなど、アメリカ式を拝借したところもあれば、
「く」は「9」の形から取ったり「こ」はかたかなの「コ」の字をまねたりと、和洋折衷型になっています。
このことを頭において学んでいただくと、ひとつひとつの文字も案外覚えやすいかもしれません。
それでは、緑陰講座・第1講の開講です。
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